熱夏・終わり

 11時から18時。土日の間に進んでいるかと期待していた実験準備がうまくいっていない。
 眠すぎて真昼にキャンパスを歩き、ようやく狂った猛暑がここにいることを知る。室外機の排気に当たっているのかと紛うほどの熱風。アスファルトの上だから余計に熱せられているのかもしれないけれど。日差しも火傷しそうに思えるほど肌を刺し、今も少しひりひりとした感覚が残る。実際軽度の火傷を負っているのだろう。
 そしてやはりカナブンが死んでいる。身近な生物の死骸がいつになく多く目につくという状況、ディザスターものの序盤みたいで緊張する。
 レポートを進めるために泊をするつもりで来ていたが、足は家に向かう。眠い。
 『七人のイヴ』第2巻の〈ホワイト・スカイ〉〈ハード・レイン〉のページを非常に興奮しながら読んだ。低アルベド小惑星エイトボール〉(ビリヤード球の八番目は黒……登場人物たちのネーミングがいちいちうまい)を引き金に始まった、予定より少し早い終末シナリオは坦々と進み、地上からのメッセージはひとつずつ絶え、視線は静かに軌道上に一本化されてゆく。燃える母星に照らされる生存者たちのコロニー。
 ステップバイステップで文明終わらせシークエンスが進んでいくこの感じ……良い……。隕石衝突とかガンマ線バーストとか一瞬で全部をダメにするよりずっとサディスティック。
 と書いてみて思い出すと『ディアスポラ』のトカゲ座ガンマ線バーストも、月面のブリアルドス重力波望遠鏡による観測にはじまって到達後のヤチマの分析的な視線から描かれる大気圏で起こる事象群のあのシークエンシャルなところに良さを感じていたのだなと納得。『天空の劫火』は自然現象とはまた違うけどそういう点は共通しているかな……。暴力的な事象のドミノ倒しめいた連なり、破局に至る一本道。
 現実の人類にはあと数世紀の進歩を順調に進めて生命圏に降りかかる可能性のある既知の破壊的な天体現象全てから身を護るすべを獲得してほしい。